前言撤回日記

ナガオカBLOG

期間限定ナガオカBLOG: 番組の質問にナガオカケンメイ本人がお答えします。

D&DEPARTMENTのナガオカケンメイさんがNHKの番組「トップランナー」への出演にともなって期間限定でblogをやっていた。ご本人が読者からの質問に真摯に回答している。
番組の方は残念ながら見逃したのだが……。

ナガオカケンメイさんといえば僕の中では川崎和男さんや佐藤直樹さんと並んで、何となくいつも「戦っている」感じのするデザイナーだが、この人の勇気と的確な批評眼には頭が下がる。
むろん世の中は、正論である、というだけではなかなか受け入れてはもらえない。正論を通すには戦略が必要で、だからおそらく戦略に長けた人は「戦っている」印象を他人に与えず、それでいながらじんわりと持論を浸透させてゆくのだろう。

その一方で横っ面を張られないと目の覚めない人、というのも世の中には確実にいる。だからナガオカさんのような人はいつでも必要なのだと思う。

日記の方も読みごたえありまくりです。

MOVE

051211move.jpg LEADING EDGE DESIGN 展 “MOVE”


以前エントリーしたスイカの改札機でも有名な山中俊治さん率いるリーディング・エッジ・デザインの展覧会を見に、青山へ。
前から見たいと思っていた「Hallucigenia」や「Cyclops」の実物が見られてうれしい。

それにしても、もはやデザイナーとか技術者とか科学者とかの垣根を軽々と超越していて圧巻。
「Hallucigenia」の実演はちょっとした衝撃を受ける。通常1日3回程度しか動かさないのに、期間中はその10倍くらい稼働させていたらしい。「ほとんど耐久テスト」とおっしゃっていた人、おそらく山中さんご本人だろう。

「Afterglow」も色々と詳しい話が伺えて楽しかったっす。
その他の展示もいちいち興味深い。それにFlashやDirectorが携帯のインターフェース・シミュレータとして活躍しているのも(意外、というワケではないのだが)実際に見たり触れたりできて面白かった。

そして重要なのは、これらのプロトタイプのほとんどが、特に商品化を目的としているワケではない、という点だ。

やっぱワクワクしなくちゃダメなんだ。改めてそう思う。

モザイク256

モザイク256

オリジナルコンテンツ、モザイク256をアップロード。

実験グラフィック、あるいはソフトウェア印象派(?)。

夕焼けの色や花の色、自然界のあざやかな色彩をピクセル単位で拾ってみると、意外にグレイッシュで彩度の低い色の組み合わせである事が判る。
適当な写真を16×16、計256ピクセルに分解する事で、それが浮き彫りになるのではないか、というテスト。

「あざやかな色」というのは決してハデな色ではなく、組み合わせである。
その組み合わせの妙を自然から学んでみたい。

と言いながら手元に全然適当な写真がなくてまいった。Flickrあたりで探せばよかったか。

The Helvetica Book

051115thehelveticabook.gif

僕の中ではデザイナー向けのお手軽Tips本ばっか出してる会社、という位置づけだったMdNからこのような本が。

サンセリフ書体の中でももっともスタンダードな書体「Helvetica」を、その歴史や成り立ち、ライバルとなる他のサンセリフとの比較などを通して丁寧に腑分けしてゆく。
あの小林章さんやタイポグラフィの読み方の小泉均さんの協力で作られており、欧文タイポグラフィに興味を持つ人には一読の価値がある。

小振りながらもノイエグラフィックの影響を受けた美しい書籍。
デザイナーのオオタニヒデアキ(大谷秀映)さんの著作でデザインもご本人のようだ。

名刺

051101namecard.jpg
印刷に出していた名刺がようやくできあがった。
てゆうかなんかスミ版浅いんだけど、ひょっとしてオンデマンド?

名刺自体はオーソドックスで、いたって面白みのないデザイン。
紙は最初、ファインペーパーの中でも白色度の高い「ヴァンヌーボ」にしようとしたんだけど、紙見本を触ってみたら意外とヌメッとした感触で、ちょっと違うなと思い、結局「アラベール」に落ち着いた。

上部にプライベートマークを箔押しであしらう。
普段、お客さんのお金であまり大胆な冒険もできないので、自分でやる時は少し目先の変わった事を試したくなる。
コンセプト的には銀箔の方がしっくりくるのだが、ちょっとありきたりだしなあと、ホログラム箔と両方刷ってもらった末にホログラム箔を選択してみた。
角度によって虹色に変化しながら環境を映し込む、色彩の移ろいはなかなか幻想的。

ふんわりとしたバルキーな手触りのファインペーパーにグッと埋め込まれた箔押しのメタリックな感触。質感のまったく異なる素材の同居が楽しい。

デザイングルメ

エッジが効いていて好きなデザインだったサイトが唐突に何の変哲もないサイトにリニューアルされていたり、消滅していたりして勝手に残念な思いをすることがある。

たいていの人は「食えりゃ何でもいい」か「おいしいものは好きだけど別にグルメってワケじゃない」かのどちらかなので、表現の部分でむやみにエッジが効いていても受け入れられない事は多い。
デザインに興味のある人はトンがった表現に多く触れているから、「当たり前の表現」を物足りなく感じがち。目が肥えてるってヤツですね。

先端を突き詰めればマニアックになっていく。

そのグルメチックなマニア性が新鮮な素材や気の利いた仕事として現れればプラスに働いていると言えるけれども、味わうのに作法がいるとか妙に変わった素材を使い始めるとかになったら要注意。
グルメ専用マニア料理まっしぐらの可能性大である。

大衆の感覚は怠惰、専門家の感覚はマニアを指向する。

欧文書体

050628ohbunshotai.jpg 欧文書体?その背景と使い方

最近デザイン本(?)で読みたくなるようなモノがないなあと思っていたら、出ました。

著者の小林章さんという方、僕が初めてその名前を知ったのは数年前なのだが、実にモノスゴイ人なのである。
当時BodoniやDidotのようなモダンローマン体に入れ込んでいた僕は、「あんまり人の使ってないモダンローマン体はないかなあ」と思いつつフォントスタイルブック2000なんぞをペラペラやっていたところ、「Acanthus」という書体を見つけた。ルーツを知りたくてFONTFONTのサイトに行き、Designerを見ると「Akira Kobayashi 」とある。
「日本人なのか!」と驚愕した。

激しく興味を抱いてWebをフラフラしているうちに嘉瑞工房のサイトにたどり着き、そこで見つけたこのページ
「うわあ、この人ドイツに渡ってライノタイプに勤めてるよ……。しかもヘルマン・ツァップとメシ食ったとか書いてあるよ。ひえー」。

詳しくは上記のサイトに譲るとして、その後もあちらこちらで執筆されているのは目にしていたが、まとめて一冊の本として刊行されるのは初めてなのではなかろうか。
とにかく平易で分かりやすく、そして丁寧に書かれた本。軽くざっと読んだだけでも参考になる部分がたくさんあって読みごたえ充分。

ニューヨークでTDC(Type Directors Club)の審査員をされた時のエピソードに

日本からの応募らしい作品の多くが、ビジュアルや印刷や紙にも凝っているのに肝心のメッセージを伝える文字組版が「素人レベル」と判断されて落とされるのを見てきたので、その直後から始まった『デザインの現場』の連載で欧文の基本ルールを書きました。素人臭さは瞬時に伝わるぞ、という警告の気持ちを込めて。


と書かれており、さもありなん、というカンジ。
これから日本の市場が狭まってくれば必然的に日本のデザイナーも海外へ出ていく事になる。
今まである意味、国内デザイナーの職域を守る役割を果たしてきた文化の壁が、今度は乗り越えるべき巨大な障壁として立ちはだかるわけだ。学ぶべき事は多い。

以前、オックスフォード組版原則なんかは一応、目を通したのだけれども個人的にはあまり役には立たなかった(どちらかと言えばライター向け?)印象だったので、ようやくビジュアルを出発点に欧文組版ルールを教えてくれる本が出てきた事はありがたい限り。

ちょうど英文の印刷物の仕事が進行中だったので急いでチェックしないと……。

タバコ

050608tobaco.jpg
友人からもけっこう前に指摘があったのだが、行政の暴力的なまでの無神経さにはあらためて呆れるほかはない。これはもう商品文化の破壊行為と言っていいのではないか。
日本人のメンタリティはもう少し繊細かと思っていただけに、正直失望した。

海外の雑誌を見ると表紙にデカデカとバーコードが入っている。
あのセンスのなさはちょっと理解できないと思うと同時に、日本の雑誌にもバーコードは入っているけれどそれに比べればずっと奥ゆかしいし、実用と美観をどうにか折衷しようとしているのだな、と思うと少し誇らしくさえ感じたものだ。

それがどうだろう。このやっちまった感。

タバコのパッケージは戦後日本のグラフィック・デザインに大きな影響を与えた。
海外でも通用する日本の高度なデザイン技術の醸成に、この小さなグラフィックが深い部分で関わっているのだ。
そのデザインの苗床のような商品文化に対してこの仕打ち。残念としか言いようがない。

TAKEO PAPER SHOW 2005

050416papershow.jpg
竹尾ペーパーショウ2005を見に表参道へ。

今回の展示では会場内で写真を撮って注意され、いきなり出鼻をくじかれた。
たぶん彼はこの展示期間中、何度も同じ注意を繰り返して辟易していたのだろう。言い方は丁寧であったが態度や表情には不快感がありありと見て取れた。
それにしても以前は普通に撮影していたけどなあ。フラッシュを焚くような無粋なマネはしなかったし……。
しかもひとつひとつの展示にそれぞれ係の人が貼り付いて、手を触れた人にも注意している。

あえて苦言を述べさせて貰うと竹尾社長がシンポジウムでおっしゃっていた通り、紙は触れる事で伝わる情報がものすごく多く、また思わず触れてみたくなるような「触覚を誘惑する力」が紙の特性であるはずだ。
その「紙」が主役の展示ならば「触って貰ってナンボ」という展示をすべきだし、それができないなら「触られてもいいや」という覚悟をするべきだ。
それすらもかなわないのならばせめて「触って貰えるサンプル」を添えるくらいのことはしたらいいのではないか。

また会場内の写真撮影が禁じられていたが、禁止なら禁止とインビテイションや会場入り口に判りやすく記載したり表示したりすべきだ。それが伝わっていないのはコミュニケーションの失敗であり企画側のミスである。
さらに言えば写真というものは展示会場での体験を反芻したり、他人にその魅力を伝えようと思うとき、大きな手がかりになるものだ。
それを看過しかねる行為とする企画側の意図がまったく理解できない(理解できない、というだけ。いい悪いではなく説明がないのだ)。

えー、思わず感情的かつネガティブな文章になってしまいました。こんなの見られたら来年から呼んでくれないかな(笑)。

で、気持ちを切り替えて展示を楽しむ事に。
1Fでは「COLOR IN LIVE」をテーマに日ごろ目にする生活用品などを10の色でくくり、10のクリエイターチームがそれぞれの趣向で展示を行う、というもの。
HAKUHODO DESIGNとデンツウ デザイン タンク、あとディーブロスには展示方法の発想に共通性がありつつも全然違ったアウトプットになっていて興味深い。ディーブロスは展示物もキレイで魅力的だったと思う。
個人的にはGKインダストリアルデザインの展示方法が面白く、また資生堂は展示物そのものの美しさが目を惹いた。サントリーのボトルもよかった。

3Fは「COLOR + S」というテーマ。デザイナーと技術者のコラボレーションということでかなり意欲的な実験色の強い作品が展示されている。
中でも圧巻は祖父江慎さんの「箔分解 ヒゲのおいらん」だろう。写真を分解・印刷する場合、通常のオフセット印刷では水溶性インクが使われる。このインクは半透明なのでCMYKの4色を刷り重ねることでカラー印刷を実現する事ができる。
これを「箔押し」を使ってやろう、というのがこの企画。

箔は重ねても下の色を完全に隠してしまうため、15線程度の荒い分解で、版をずらしたりアミ点の角度を変えたりしつつ熟練した(熟練しすぎて定年退職した)職人さんが手作業で一枚ずつ丁寧に作っている。
近くで見るとその豪華絢爛さがよく分かる。酔狂もここまでくれば芸術的だ。

15時から祖父江慎さんや北川一成さん、松下計さんらによるシンポジウム。僕的ヒーローの一人であらせられるナマ祖父江慎さんを間近で……。
てゆうか一時間半は短い。あまりにも短い。みなさん話が面白すぎてあっという間に終わってしまった。
創作にかける情熱やそれぞれの深い見識はじゅうぶん伝わってきて、勉強になる事も多かったが、それだけではなく、例えば北川一成さんは関西系の商売人ぽいノリと裏話で楽しませてくれる。集団の中での自分の役割を瞬時に把握し、そこを押さえる術を本能的に判っているのだろう。ウマいなあ、と感心。

株式会社竹尾の竹尾稠社長まで飛び入り参加され、海外のエンボスやエングレービングの貴重な資料を見せてくださり、実際に触らせてくださった。感動。
と同時に、こういう職人技も敷居がもっと下がればいろいろ可能性があるのになあ、と思わされた。

また、祖父江さんが箔押しの後に出るフィルムをたくさん持ってきて「あげます」というので普段あまり見る事もないしせっかくだから貰ってきた。まあゴミなんですけど(笑)。

質疑応答の時間がなかったのが少し残念だったけれども、楽しくて有意義な体験をさせていただいた。

というワケで本年のセンスとスキルの融合、というのはなかなか深いテーマで唸らされる。
Webのクリエーターが元気なのはやはり個人の力だけでかなり実験的な表現が可能、という点が大きいように思う。
印刷というのは現状でもかなりのコストがかかり、簡単に試行錯誤、というワケにはいかない。
シンポジウムでも「印刷ラボ」のような話を松下計さんがされていたが、その部分の障壁をどう低くしていくか、が可能性を開くカギになるかもしれない。

毎年刺激的なTAKEO PAPER SHOW。来年もまた楽しみである。

FILING

050411filing.gif FILING?混沌のマネージメント

コシマキ(帯)の「脱・整理術」というコピーからも判る通り、検索性を向上させる分類・整頓の方法を指南するような、いわゆる整理術の本とは一線を画す一冊。

デジタルデータに関する話ではなく、昨年のTAKEO PAPER SHOWで「HAPTIC」と平行してテーマにあげられていた「FILING」を本にまとめたもので、「もの」に関する話である。
サブタイトルに「混沌のマネージメント」とあるように、クリエイティブな発想が往々にして混沌から産み落とされる事に着目し、混沌を内包したまま大づかみに分類や整頓を行う事ができるのではないか、という日常への提案をおこなっている。

予定よりかなり遅れた刊行で、もう出ないのかと思っていた。書店に行くヒマすらなかったからなあ。

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